バイトデビュー

高校生になってバイトをしてみたい。
水泳部だったからか区報を見たからか覚えていないが、バイトに応募した。
夏にだけ開設される区営プールの監視員。
募集要項には泳力テストがあり、当日まで内容がわからなかった。
当日の夜、常設の屋内プールに行くと内容は100メートル顔を上げて泳ぐこと。
やってみると意外にきつい。顔を上げて泳ぐのは顔をつけて泳ぐことの3倍は疲れるらしい。
どうして顔を上げて泳ぐか、それは溺れた人のところに行くのに見落とさないように顔を上げて泳ぐ必要があるから。
さすがにある程度泳ぎに自信がある人たちなので、落ちた人はいなかったように思う。
バイトは救助員の日赤かなにかの資格を持っている人、単なる監視員、事務員の三通り。
時給も三通りで年齢などは関係なかった。区役所に勤めている人が偽名で働いていた気がする。ゆるい時代…
高校一年生にとって大学生はすごい大人。ライフスタイルは憧れるし、夏休みも憧れる世界。
最高で6歳近く歳上なので当然のことで、はじめて働くことも新しい世界。
2年続けてやって、長い浪人生活になってしまってそれっきりになってしまった。
強面のゲームセンターの店長が夜の常連で、瓶のコーラなどを差し入れしてくれたが、あれは店のものなのかおじさんが買い上げたものなのか、そのあたりよくわからない。
プールサイドの一部に喫煙所があって、タバコが吸えたのも今ではありえない。プールの下が住宅のようになっていて、管理人の一家が住んでいた。冬は何をしていたのだろう。
そのプールも10年以上前に改装されてきれいなプールになった。何回か行ってやはり若い監視員がいたが、なんとなく声をかけたかったが、おっさんが30年以上前の話をされてもなあ、と思われるに決まっているのでやめた。
あの当時30年前といえば、戦後すぐ、ではないが敗戦色が強く残っていた頃だろう。おっさんにとって少し前は、若い人にはとんでもない昔。そんな話ばかりしないようにしなくては。