とある女性と二人で電車に乗った。
彼女はごろごろ引っ張るバッグを持っていて、ぼくは次の駅で降りるので彼女に譲ったが、席はひとつだったので座らなかった。
その様子を見ていた20代の優しそうな青年が、どうぞと席を譲ってくれた。
ぼくは一駅で降りるし、仮に一駅で降りないにしてもその状況では絶対に座れない。
一つずれれば座れるので、ぼくたちが座っても彼はとなりに座るかもしれないけれど、立ったままかもしれない。
青年は優しい気持ちからだが、なんとも気まずい感じ。
せっかく立ってくれた彼ももう一度座るわけだし。
ゲームや電話を夢中でいじって、二人組みが乗ってきても気がつかないバカもいる。
夢中でいじっていなくても、気がつかない気の利かないやつもいる。
さすがにそれだけは嫌なので、自分が寄れるときには絶対に寄る。
反対に寄ったことに気がつかず、お礼を言われなくてもそれでもいい。
単なるカップルに席を譲る必要があるのかな、青年は優しい気持ちだったのだけれど…
あと20年したら、席を譲られて今日のように、ぼくは次降りますからって断るのだろうな。
ちなみに父は数年前に、北京の地下鉄で席を譲られたのだが、それは初めて席を譲られたらしく、うれしかったのか降りるときに中国人のおねえちゃんに、未開封の柿のタネをあげていた。