うちの事務所があるビル。
オーナが西山さんだからなのだろう。
西山さんはちょっときれいな戸川純に話し方が似ているちょっときれいな人。
25室前後あるビルは、空室は少なくても人影はまばら。
昼間でさえ人のいないビルは夜になると、さらに人影はまばら。
夜も8時になると、4階にいるぼくの存在に気がつくはずもなくシャッターを閉められてしまう。
ここ数日、4階の廊下の蛍光灯が点滅してる。
蛍光灯が点滅して、これでコウモリが翔んでいたら完璧だ。
風が強い日は、天井からカタカタと音がする。
部屋にいるときは別に何も感じないのだが、部屋を出るのは勇気がいる。
そういうときに限って、おなかが痛くなる。
ああ、トイレに行きたいが出たくない…
夜中にビルを出るときは決して振り向かない。
忘れ物をしてもあきらめる。
明日がゴミの日でもあきらめる。
東里ビルは魔物が住んでいるからな。
41歳明日どうやって生きようという行き当たりばったりの魔物が。