銀座のママが新人ボーイに「お客さん帰るからでんでん虫つかまえてきて」と言った。
いつまでたっても彼は帰ってこない。
2時間経過するとずぶ濡れになった彼が「日比谷公園まで行きましたがいませんでした」と。
これがママの言うでんでん虫。
行灯(あんどん)がこのでんでん虫とちょうちんがあるのは知っていたが、これは運転手の好みだと思っていた。
調べてみたら好みではなくて、所属団体の違いだった。
東京に限ると、でんでん虫が東京都個人タクシー協同組合(東個協)。
ちょうちんが、日個連東京都営業協同組合(都営協)。
白い車に青い線、というのも東個協加入のカラーだった。
個人タクシーになると収入が2倍くらいになるらしい。
そのかわり、規制があるのでなかなかなることができない。
家に車庫があって、机があって、領収書など1年貯めて、もちろん無事故で運転手何年以上というのもある。
規制がないと、雨の日や日曜日など仕事に出たくないという理由でタクシーが減るのが困るからということらしい。
ちなみに、茨城県、山梨県、鳥取県、島根県には個人タクシーが存在しない。
組合がないからだろうか。山交タクシーが強いからだろうか。
個人タクシー協同組合と契約してチケットを持っているお役人は、これを指名するわけだ。
ママが単にマナーがいいから個人タクシーを呼んでと言ったのではなかった。
お客はでんでん虫のタクシーチケットを持っているから「でんでん虫呼んで」ということだったのだ。