個室居酒屋だが上が空いているので、会話はすべて聞こえる。
「日本酒と焼酎の違いがわからない」年配カップルの女性が話すと、男性の方があいまいな説明をはじめた。
お酒を分離して、味が薄くなるけれど、材料にこだわるというか…
食塩水を沸かすと冷やされて水が取り出せてさあ、モゴモゴ…
ふーん、と女性は聞いていたが部分部分はいいものの、肝心なことがまったくわかっていないご様子。
材料を発酵させて造ったものが醸造酒。
さらに、醸造酒を蒸留したものが蒸留酒。
蒸留とは沸点の違いを利用して、アルコールだけを取り出す。
どんなにまずいお酒でも、アルコールだけ取り出して、水で薄めれば飲めるじゃないかと。
常温・常圧で水の沸点は100℃、アルコールの沸点が78℃、混ざったものを火にかければ、78℃に達した時点でアルコールだけが蒸発する。
これが常圧蒸留で、材料の香りやうま味が残る。残っていいものも、悪いものも残る。昔ながらの味で、昔の焼酎は臭いの原因。
原料を入れたタンクの圧力を下げると沸点が下がるので、余分なものがまざりにくいマイルドなアルコールが取り出せる。この方法で、昨今のおいしい、飲みやすい焼酎が出来るようになった。だらに、蒸留を何度も繰り返して行う連続式蒸留を行うと、味も素っ気もない純度の高いアルコールが取り出せる。
これが、甲類焼酎と呼ばれるもの。日本酒に添加する醸造用アルコールも同じ。
要するに、日本酒やワインを沸かしてアルコールを取り出せば焼酎が造れる。
どんなものでも、アルコール発酵してエタノールさえできていれば、焼酎は造れる。
そのまま飲めないようなものでもいいので、ピーマンだのタマネギだのという原料でも焼酎は造れる。