中学のときに、仲のよかった友だち♂(以下ともちゃん、実名そうは呼んでいないが)がいた。
顔はきれいだけど、何となくモテなかった。
一説ではモデルになったらしく、今はモテるだろう。
その彼は、同じバスケットボール部のユリコちゃん(実名)が好きだった。
ユリコちゃんは学年いちにを争う美人だがものすごく気が強かった。
ちょっと柔な男は気が強い女性が好きなのかも。
俺がユリコちゃんからチョコレートをもらえるようにしてやるよと、ともちゃんに伝えた。
でもユリコちゃんはともちゃんを好きなはずもない。
ユリコちゃんに頼んでみると「なんで私がチョコレートあげなくちゃいけないのよっ」
さすが学年いちにを争う気の強い女。
じゃあ、俺が買うから、名前は書いてもいい?
「それならいい」あっさり。
中学三年という多感な頃に、ぼくは原宿でチョコレートを買った。
当時覚え立てのフレーズ、especially for you.とカードを添えて。
当日入試だったので(バカか)前日のうちに彼の机の中にそっと忍ばせておいた。
入試が終わって学校に帰ると(そのために)、予想通り彼が喜んで近づいてきた。
「チョコレートもらったよ!」
それを悪友と陰で笑ったのだが、今思うとあまり悪いことではないのかも。
ホワイトデーにお返ししなよ、と悪友とおもしろがって、結局彼は彼女にホワイトデーに返した。
ぼくは当日の入試の高校は不合格になり、その日から転落の人生がはじまることを知る由もない。
今考えると、悪いことではなくいいことをしたのかも。
彼女の承諾も得たのだし。
彼女は労せずホワイトデーのお菓子を手に入れた。
思い出した、好きな後輩がいてチョコレートをもらうためにも学校に行ったんだ。
先輩!うーん、もう一度呼ばれたい。
ええ、男は呼ばないでいいですとも。